当社Tricolage株式会社の観光コンサルティングサービスでは、観光事業のサステナビリティ促進に係るコンサルティングを行っております。この度は、八ヶ岳南麓エリア(山梨県北杜市小淵沢町)の芸術のリゾート小淵沢アート&ウエルネス(以下、「KAW」)が運営する宿泊施設「ホテルキーフォレスト北杜」におけるサステナブルな宿泊プランの開発事業を支援させていただきました。
(➞小淵沢アート&ウェルネス)
『期間限定サステナブルステイプラン』として販売する当宿泊プランは、宿泊者自身で地域を回る「セルフガイドツアー」や曜日毎に実施の「アクティビティ」体験を含めたツアーを特徴とし、旅全体を通してサステナブルな旅行体験を実現できる新たなサービスです。
こちらの記事では、当社が日本初GSTCツアーオペレーター認証取得旅行事業者として行うサステナブル・ツーリズム事業のサービス事例として本事業をご紹介します。
サステナブルなホテルを目指し、あらゆるニーズに応えた改革を実現
コロナ禍で高まるサステナブル・ツーリズムの重要性に伴い、従来とは異なる “選ばれる” 観光地となるための戦略が求められる昨今。当然ながら宿泊事業者も然りで、当社はコンサルタントとして、宿泊施設が「持続可能」な観光地域づくりのハブとしてサステナビリティを実践するためのお手伝いをしています。
さて、あらゆる自然の魅力で知られる八ヶ岳ですが、特に近年はその持続可能な地域社会の営みが注目を集めています。そのような中、周辺リゾート地のKAWも持続可能な発展の一端を担うべく、施設内の「ホテルキーフォレスト北杜」をサステナブル宿泊施設として打ち出す方法を模索していました。
そこで当社は、ホテル施設内での宿泊体験だけでなく、八ヶ岳の暮らしに触れながら、持続可能な一連の旅行体験を提供することが鍵と考えました。これにより、土地・人に魅了されてファンとなりリピーターに繋がるのは勿論のこと、持続可能な社会を実際に目で見て体験することで、旅の後で日常的にサステナビリティを実践する勇気・動機付けに繋がります。
そのような宿泊・旅行体験を提供すべく、当社は観光庁による実証事業『令和4年度新たなビジネス手法の導入による宿泊業を核とした旅行サービスの提供促進に向けた実証調査』を活用しました。申請に係る事業企画を支援し、採択を受けた後は、実際に新しい宿泊プランの造成・制作・PRなど、幅広くサポートいたしました。
(➞ホテルキーフォレスト北杜)
国際基準『GSTC-I』に則り、地域と共にツアー企画
当社は、日本初となるGSTCツアーオペレーター認証取得旅行事業者として、持続可能な旅行と観光のためのグローバルな基準「GSTC基準」に徹底した事業企画を行っています。
GSTC(グローバル・サステナブル・ツーリズム協議会)とは国連が主導する非営利団体で、サステナブルツーリズムの国際基準であるGSTC基準を開発・管理しています。このGSTC基準は[A.持続可能なマネジメント][B.社会経済的影響][C.文化的影響][D.環境への影響]の主要4本柱で構成されています。
※当社のGSTC認証取得についてのインタビュー記事は「日本初のGSTCツアーオペレーター認証取得」よりご覧いただけます。
【本事業で注力したGSTC-I基準】
本事業も然り、GSTC-I(GSTC観光産業向け基準)基準を軸に地域事業者・地域住民の皆さまに寄り添い、地域の社会的・経済的利益の最大化に貢献する姿勢で取り組みました。
■ 地域への密なヒアリングやインタビューによる情報「収集」
GSTC-I 4つの柱のうち[B.社会経済]の基準達成には、地域の参画が欠かせません。積極的に地域コミュニティー・事業者への聞き取りを行うことで、効果の高い企画の実現に成功しました。
例えば、地域の方々へのヒアリング調査で多かったのが、“素晴らしい湧水の存在を知って欲しい”というご意見。そのような生の声を汲み取り、具体策として旅行者の周遊観光促進を目的に、名水を誇る湧水やGoogleマップには載っていない給水スポット等も含めたオリジナルマップ ー「八ヶ岳とつながるマップ」ー を制作。また、「中村キース・ヘリング美術館」マイボトルを当宿泊プランを利用するゲストにプレゼントすることで、湧水地に行くきっかけを提供し、より環境に配慮しながら地域おすすめの八ヶ岳の名水を愉しんでいただけます。
現地へ幾度も足を運び、実際に体験することで、この様にその土地ならではの効果的な企画を実現するに至りました。
他にも、アクティビティのひとつとして地域事業者と造成したヨガ体験(『八ヶ岳に満たされるYOGA&LUNCH』)では、ホテルゲスト限定だったKAWリゾート内のヴィラをスタジオとして地元の方々にも開放することで、地域内外のコミュニティ交流の場を新たに実現しました。
単に宿泊の場を提供する従来の宿泊体験とは異なり、この様に地域参画の下での包括的な旅行体験として発展させることで、その土地ならではの付加価値ある顧客体験に昇華させることができるのです。
■ ストーリー制作と情報「共有」
当サステナブルステイプランの満足度を上げるには、旅行者に必要な知識・情報を発信し、事前に土地を知ってもらうことが重要と考えます。そのため当社は、地域の自然環境や地域文化をはじめとする、その土地・人々のストーリーや魅力への理解を訴求したコンテンツの制作に力を入れました。
この度、本事業のため新たに開設した「サステナブルステイ特設サイト」では、訪問者へストーリーを浸透させることを目的の一つとし、以下のコンテンツを用意しました:
『セルフガイドツアー』 様々な切り口で八ヶ岳のサステナビリティを愉しめる、2日間のステイを例に取ったツアーガイド。全て当社スタッフが現地で地元民やホテルへ調査・精査を行った上で選定した、訪れることでサステナビリティの実践や貢献に繋がるスポットを掲載。地元民おすすめのお店や飲食店も含む実用的なガイドです。 | |
『アクティビティ体験』 八ヶ岳の豊潤な自然の中で、旅行者が地域の人々との繋がりを築ける体験により、付加価値を見出すことが目的。各アクティビティのページでは、体験の魅力や参加する意義、賛同し提供してくださる各事業者の方々のストーリーや人柄を紹介しています。 | |
『八ヶ岳とつながるマップ』 地域のヒアリングを通してオリジナルの網羅的な解説付きマップを制作。Google マップで検索困難な秘境や水汲みスポット等も掲載しており、現地で実際に活用いただけるツールです。 | |
『インタビュー記事』 このツアーに参加する意義や価値を、キーパーソンの方々へ取材。読者の方々が、八ヶ岳と持続可能性の深い関係性を知り、上辺だけの行為に留まらない“本物のサステナビリティ”を実践できる動機付けとなることを目的としています。 | |
『ホテルの取組&あなたにできること』 環境に優しいアメニティや寄附活動を含むホテル自体の持続可能な取り組みや、旅行者のための簡単な実践方法を紹介。当宿泊プラン全ての過程でサステナビリティ貢献・実践できる仕組みを旅行者に認識いただくことが目的です。 |
公開に向けては、KAWが本当に伝えたいメッセージが正しく導かれ、きちんと編成されていることを確実にするため、関係者の方々と幾度も調整を重ねました。
■ ホテルのサステナビリティ構築
さて、当サステナブルツアーのハブを担うホテルキーフォレスト北杜ですが、以前から社会貢献活動を行っていたものの、「サステナビリティ」への具体的な指針・方策等にはなかなか落とし込めていない状況でした。
そこで当社は、本事業の特徴である“旅行者が宿泊するだけでサステナビリティに貢献・実践できる”仕組みを構築するための支援を実施。サステナブル・ツーリズムに取り組む上では、課題となる旅行者の苦手意識や不安を解消し、よりサステナブルな旅を促進するためのインセンティブや工夫・仕掛け作りが重要です。当社はスタッフが実際に宿泊し、ゲストの視点でホテルサービスを十分に理解したうえで課題や改善点を洗い出し、現場担当者と協議を重ねて以下を含めた新たな施策を打ち出しました:
ホテル客室内配置のサステナブルステイ情報冊子
サステナブルトラベル誓約書
宿泊者と環境に優しいアメニティ製品
キース・ヘリングの特別マイボトルプレゼント
カーボン・オフセット制度
宿泊料金の一部を地域支援の寄付に充当
旅行客が真の価値とするのは勿論、現地で実際に迎え入れるスタッフや関係者のもてなしや対応力です。当然ながら、新たな施策を現場に浸透させるべく、社員研修とオペレーション確立のための打ち合わせ・現地でのトレーニングも徹底しました。
まとめ
サステナビリティに関わる戦略策定や事業開発は、地域や事業者の特徴や課題、取組状況などを十分に鑑みた上で進める必要があります。今回ご紹介した事例では、すでに持続可能性の要素を多く持つ小淵沢アートアンドウェルネスが、質の高いサステナブルな顧客体験を提供し、持続可能な宿泊事業者としての価値をさらに高めるお手伝いをさせていただきました。
本事例は、今後の観光業界におけるサステナブル・ツーリズムの推進に係り、国内先進事例として業界の一助となることを目的に紹介しました。Tricolageでは、地方自治体や観光事業者の皆様のサステナブルな観光づくりをお手伝いしています。
「持続可能な観光に関する方針・計画を策定したいー」
「サステナビリティを社内に浸透させたいー」
「サステナブルなツアーを作ってこれからの旅行者のニーズに応えたいー」
「・・・何から始めれば良いか分からないー」
サステナブルツーリズムについてお困りのことがあれば、お気軽にこちらまでお問合せください!あなたの会社、あなたの地域に沿った最適なサステナビリティを、共に考えていきましょう。
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