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  • Fumiko Yoshida

日本の山々の魅力:火山、文化、そして山小屋

火山大国、日本。山は古くから日本人の身近にあり、生活の一部でした。もともとヨーロッパから伝わってきたとされる登山文化は、今では日本で多くの人に親しまれています。



この記事では、日本の登山専門誌『山と溪谷』を発刊している「山と溪谷社」より、インバウンド事業プロジェクト プロデューサーの内田雄紀氏と法人営業部プロデューサーの湯浅陽介氏にインタビューを行い、日本の山、そして魅力的な山小屋についてお話を伺いました。


内田 雄紀 株式会社山と溪谷社

1991年に入社し、『ヤマケイJOY』などの編集部を経て、2006年に広告部に異動。登山メーカーのPRを担当し、2016年には官公庁・地方自治体向けのソリューション事業を立ち上げ、2021年には法人営業部でインバウンドや移住定住施策を含む事業拡充に注力。

湯浅陽介 株式会社山と溪谷社

1997年入社後、広告部や新規事業開発部を経験し、2010年に「ヤマケイオンライン」立ち上げに貢献。その後11年間運営に従事し、2021年からは法人営業部で登山用具メーカーや山小屋のPR、地方自治体の観光プロモーションに携わる。


火山大国 日本


(吉田:Tricolage) 日本は火山大国と言われています。そもそもなぜ火山が多いのでしょうか。


(内田氏)日本列島は世界でも稀な複雑な地殻の上に形成されています。ユーラシア、北米、太平洋、フィリピン海の4つのプレートの衝突部にあり、そこにマグマが溜まりやすく、多くの噴火が起こり火山が形成されました。旧来は「死火山」「休火山」「活火山」と分類されていましたが、年代測定法の進歩により、現在は「死火山」「休火山」という分類はしていません。




(吉田)噴火した火山は周辺環境にどのように影響してきたのでしょうか。


(湯浅氏)噴火した火山の火口には水が溜まって火口湖ができ、人々が住むようになって町が形成されていきました。また有名な富士五湖などは、噴火による溶岩流で湖から溢れた湖水や山腹の流水が合流した影響で誕生しました。その外側には温泉で有名な箱根があります。日本に温泉が多いのは、日本が火山大国だからなんですね。



文化としての山


(吉田)温泉は日本の重要な文化の一つです。その他に、山と日本文化の繋がりについて教えてください。


(湯浅氏)日本には山岳信仰というものがあります。日本人にとって山は古くから信仰の対象として崇められてきました。日本特有のアニミズム的な考えですね。山が噴火したら、日本人は「神様が怒っている」と考え、平穏のために祈りを捧げていました。


(吉田)確かに、山を登ると、神社や鳥居を目にすることがよくあります。


(内田氏)富士山、白山、立山は、日本三大山岳信仰と呼ばれています。標高が高く登るのが大変であることから、修行僧が登る山として捉えられてきました。今では多くの一般登山客が登っていますがね。ですが、山を信仰する精神は現代の日本人にも残っています。2014年の御嶽山噴火は多くの犠牲者を出しましたが、御嶽山信仰の方々は「鎮まれ、鎮まれ」と祈りを捧げていたといいます。



日本の山の魅力とは

(吉田)信仰としての山が、今では登山の山として親しまれていますね。ずばり日本の山の魅力は何でしょう。


(湯浅氏)日本には登山対象の山が数千あります。そして、同じ山でも季節で表情が変わりますし、自身の精神状態によっても異なってきます。×4(四季)でも、×12(12ヶ月)でも無いんですね。楽しみ方は無限です


(内田氏)日本では極端な気候があります。火山ならではの春夏秋冬。あまり雪が降らない東京から1時間もすると、一気に雪が深い地域に入ります。北海道では一晩で60センチも積雪があるような地域もありますが、このようなところは世界中でもあまりありません。最近では「Japow(Japanese powder snow)」を楽しみに外国から多くの方々が日本を訪れます。



日本の山小屋

(吉田)今、山小屋が一つのデスティネーション(目的地)として人気を集めていますね。


(湯浅氏)その通りです。自然の時間に合わせて、自然の音、光、匂いを感じて過ごせること − これが大きな魅力です。最近は電波が入ってしまう所も増えてきていますが、山小屋は本来、デジタルデトックスして、リトリートできる素晴らしい場所です。


(内田氏)山小屋は、もともと林業や狩猟のための作業小屋として機能してきました。国立公園法が制定される前から個人が運営してきた小屋が多いため、他国に比べて日本の山小屋はとても個性的。オーナーのこだわりが色濃く出ています





世界一レベルのサービス

(吉田)山小屋と聞くと、登山客がただ寝るだけのイメージでしたが・・・、違うのですね!


(湯浅氏)山小屋はホテルや旅館などの一般的な宿泊施設と異なり、山間の厳しい環境に立地しています。電気や水道が通っていないところも多く存在します。ですから、山小屋のオーナーは、限られた条件の中で工夫してサービスを提供しているのです。


(内田氏)北アルプスや八ヶ岳の山小屋は世界一のレベルと言われています。大変清潔で、美味しいご飯を提供しています。昔は山小屋ではカレーが主流でしたが、最近は食材にもこだわり、地元のものを使った食事を出すところが増えています。


本記事の最後に、お二人のおすすめの山小屋をご紹介していますので、是非ご覧ください!



山の持続可能性

(吉田)山という自然の恵みを受けて、私たちは山登りを楽しむことができています。この美しい山々が今後も続いていくために、我々ができることはどのようなことだとお考えでしょうか。


(湯浅氏)ゴミを捨てない、決められた登山道以外は絶対に足を踏み入れない、など基本的なことを必ず守ることです。当たり前ですがとても重要なことです。


(内田氏)地球規模の気候変動に対して、人間は抗うことはできないのではないかと思います。適応することが必要なのではないでしょうか。人間は欲を捨てません。代替物を探すより、まずはその欲を抑えることが必要です。代替物を見つけたところで、自然には影響を与えているのですから。温暖化で気候が変わり、土砂崩れなどで登れなくなる山が増えています。欲しいものを抑制する、でないと今ある自然がどんどん失われてしまいます。



おすすめの山小屋

北アルプスの燕山荘は、中房(なかぶさ)温泉登山口から急登の登山道を約4時間。ここは大変サービスが良いことで有名です。北アルプスの女王と呼ばれる燕岳にある、とても歴史のある山小屋ですが、現在の3代目の社長さんが世界で一番の山小屋にする!として、北アルプスの美しさを体現した非常に素晴らしい山小屋を経営されています。このおしゃれな外観の建物、実は帝国ホテルを設計した人が建てた小屋なのです。


海外からの観光客も大勢訪れる、日本有数の山岳リゾート地「上高地」から、ほぼ平坦なハイキング道を徒歩で2時間。もちろん車では行けません。食事やサービスはホテルのようでありながら、消灯時間が決まっていたりゴミの持ち帰りを求められたり、山小屋らしいルールで運営されているユニークな施設です。


ご家族で経営されているこじんまりとした昔ながらの山小屋は、稲子湯(いなごゆ)登山口から約2時間半。薪を使って暖を取り、ランプを使って灯を灯す、とても素朴な所です。ここではオーナー夫婦や他の登山客との会話を楽しんだり、山を眺めているだけで幸せな気分になれるような山小屋です。


北アルプスの最奥に位置する、とても良い温泉がある山小屋です。折立(おりたて)登山口から山小屋に着くまでに2日、帰ってくるのに2日かかる、日本一遠い温泉と言われる露天風呂が、登山の疲れを癒します。ハードルは高いですが、登山で疲れた後の温泉は最高のリトリートになるでしょう。


大曲(おおまがり)登山口から約2時間。九州の九重連山にある法華院温泉山荘は、九州の最も高い場所に位置する温泉があり、星を眺めながら登山の疲れを癒せるパワースポットです。




今回、内田氏と湯浅氏との対話を通じて、日本の山々が単なる景色を超えた深い意味を持つことを改めて実感しました。火山によって形成された壮大な地形、そこに根差す山岳信仰、そして季節ごとに変わる風景の美しさは、自然と文化が織りなす独特の融合を示しています。実際に私自身も昨年、富士山をはじめとするいくつかの山に登り、普段は気づかない景色や植物、文化、そして習慣に多くの新鮮な驚きを感じました。山小屋でのリトリート体験は、山に登り、そこで静かに時間を過ごすことでのみ得られる貴重な体験。今年は山小屋を目的地として、時間をかけて山を登りたいと思います。


私たちが享受するこの美しい自然は、私たちの手によって大切に守られ、次世代にも引き継がれるべき宝です。次に山を訪れる際は、ゆっくりと登り、日本の自然が持つ異なる側面を体験してみてはいかがでしょうか?日本の旅に興味がございましたら、ぜひお問い合わせください。またインスタグラムLinkedinでフォローしてください!





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