【宿泊業界対象セミナー 開催レポート】後編:これからのホスピタリティとは 〜「持続可能性」という新しい価値〜
- Yuki Katsutani
- 2022年10月21日
- 読了時間: 8分
更新日:2022年12月28日

2022年9月30日、Tricolage株式会社と一般社団法人日本能率協会の共同開催で、
「これからのホスピタリティとは〜「持続可能性」という新しい価値〜」というテーマで オンラインパネルディスカッションを開催いたしました。
前回のセミナーレポート(前編)では、宿泊業界のSDGs取り組み事例を学ぶべく、 【雪国観光圏】の旅館施設、そして帝国ホテルのサステナビリティ推進活動について 紹介しました。
今回は、セミナーレポート(後編)として、より具体的にSDGs/サステナビリティの実態について討論したパネルディスカッションの内容を主にレポートします。
目次
1.パネリスト・登壇者紹介
2.パネルディスカッション
2.1 SDGs推進により明らかになった宿泊施設の課題と解決策
2.2 SDGsに取り組んだことのメリット・効果
2.3 日本版SDGsは、世界から脚光を浴びている
3.(視聴者の質問)「観光のユニバーサルデザイン化」の取り組みについて
4.ここまでのまとめ
5.宿泊業界が「サステナビリティ」促進に取組む実践的な方法
6.おわりに:宿泊業界全体で持続可能性を促進するために
1. パネリスト・登壇者紹介
![]() | ■パネリスト 井口 智裕 氏(いぐちともひろ) 株式会社いせん 代表取締役 一般社団法人雪国観光圏 代表理事 株式会社龍言 代表取締役 |
![]() | ■パネリスト 平石 理奈 氏(ひらいしりな) 株式会社帝国ホテル 総務部 総務課 SDGs推進担当課長 |
![]() | ■モデレーター 北村 剛史 氏(きたむらたけし) 株式会社日本ホテルアプレイザル 代表取締役、専任不動産鑑定士 株式会社サクラクオリティマネジメント 代表取締役 一般社団法人観光品質認証協会 統括理事 |
![]() | ■司会 吉田 史子(よしだふみこ) Tricolage株式会社 取締役COO |
2.パネルディスカッション
ここからは、モデレーター・北村剛史氏が進める討論形式により、3つの問いについて考えました。

2.1 SDGs推進により明らかになった宿泊施設の課題と解決策
北村氏
何をすべきか模索している宿泊施設が多いです。 そこで、取組んだ背景や実践されて分かった課題を教えてください。

井口氏:
「旅館のブランディングを海外に向けて発信するのは難しい一方、
旅館の特徴である『地域とのつながり』は、世界のグローバルチェーンと差別化できる強みと考えます。
そして『地域とのつながり』において『持続可能性』は当たり前のキーワード。にも関わらず、温泉旅館にはこの事が当たり前すぎて、むしろ認知できていない状況なのが日本の課題です。
業界仲間に「持続可能性」の重要性をどんどん発信していきたいです。」
北村氏
帝国ホテルの社員約1700名が一丸となってSDGsの取組みを推進できた、 その背景を教えて下さい。

平石氏:
「やはり「創業の精神」だと思います。
『社会に貢献する』という企業理念により、極々自然に『SDGsをやるべき』と受け入れられました。また、それぞれの従業員が持つ歴史で体験してきた経験が、後押ししたと考えます。」
2.2 SDGsに取り組んだことのメリット・効果
北村氏
業界の多くの方々が関心を寄せるのが、SDGsのメリット。 顧客満足度・従業員満足度・貢献した地域の声など、 何か目にみえる効果はあったのでしょうか?

井口氏:
「一番は、スタッフへの効果でした。指標を設け、可視化、数値化することで、働く人たちの意識が変わりました。
お客様に関しては、『ラグジュアリー』×『サステナビリティ』は共存し辛いため、いかにお客様にご納得いただき、一緒に作り上げていくのか、がテーマです。
『小規模宿泊施設だから、経費削減しているのでは?』と思わせないためには、地域としての世論を作っていくのが大事です。
仲間で一緒に盛り上げないと、マーケットは変わりません。
『この町のために。この村のために。日本のために』
と、ネットワークを作ることが必要です。
だからこそ、1)まずは自分の従業員から意識を改革し、2)そこから仲間を増やしていき、3)お客様を啓蒙する…ことが大事でしょう。
なお、世界、特にヨーロッパは日本よりもかなりSDGsへの意識が高いので、
インバウンドが増えた時のために日本がしっかり準備をしておく必要があるでしょう。」
北村氏
2020年からSDGsに取り組んできたことでの、従業員満足度の変化は いかがでしょう?

平石氏:
「『なぜサステナビリティに取り組むか?』を従業員の立場で考えると、『サステナビリティに取り組み社会に貢献している企業に勤めることは、誇らしい』です。
特に若いスタッフは、SDGsについての学校での豊富な勉強量や情報量により、
高い意識を持ち、ホテルの取り組みに多くの関心を寄せている傾向があります。
また、(前述の)職員食堂等の取り組みに毎日触れ、SDGsを身近に考える仕組みは、大切な要素かもしれません。」
2.3 日本版SDGsは、世界から脚光を浴びている
北村氏
昔から循環型社会を構築してきた日本。国土の68%が森林、海に全部囲まれ、多くの農村が大事に残され、しかも誠実な人種である日本人が、 サステナビリティに対してどう取り組むかを世界が見に来ると予想されます。 実態が伴わない見せかけの環境配慮(いわゆる“グリーンウォッシュ”)ではなく、日本流「本気」SDGsのあり方や大切な視点とは何でしょう?

井口氏:
「地方の暮らし、日本の文化は、SDGsそのものです。
(例えば、米どころ新潟で、小さすぎてご飯にならないお米を選別し、お煎餅等の米菓にしているなど)
日本人にとっては、
単に『古民家=素敵』ですが、海外では『古民家=SDGsだ!』となります。
日本古来の考え方を温故知新の心で掘り下げてヒントとすれば、
世界へのメッセージになると考えます。全国各地でやって欲しいですね。」
北村氏
1700名の従業員を動かすに当たり、大切な視点とは何でしょうか?

平石氏:
「帝国ホテルでは、実は1700人の従業員に対しサステナビリティの
旗振り役は2〜2.5人という状況です。
だからこそ、自動的に体制がまわる仕組み・組織を整えた上で、従業員食堂の例の様に、自然と『SDGsに貢献しよう』と思える様々な環境を作っています。
また思考面の取り組みとしては、社内決裁の決裁書で『あなたの取組みは17の項目のうちどこに値しますか?』という確認を取り入れました。
自分達のアクションが、サステナビリティにどう貢献しているかを常に考えさせる仕組みとなっています。」
3. ( 視聴者の質問 ) 「観光のユニバーサルデザイン化」の取り組みについて
パネルディスカッションの最後に、視聴者からのご質問へパネリスト・モデレーターの皆様にお答え頂きました。
視聴者の質問
昨今、高齢者や障害者でも楽しめる観光「観光のユニバーサルデザイン化」に注目が集まっています。 この様な社会問題へはどのように取り組まれているでしょうか。

井口氏:
「旅館のバリアフリー化などハード面はもちろんですが、
ユニバーサル化への取組みは特に食の分野への意識が高いです。
宗教、アレルギー、ヴィーガン等の多様なリクエストに柔軟に応えられる様に、今は需要が少なくとも、経験値を積むために既に準備に取り組んでいます。」

平石氏:
「ハード面では、バリアフリールームの客室を1から10部屋に拡大・改良を重ねました。単に病院の様な内装にするのではなく、いかなるお客様へも提供できる客室へ改修工事を施しています。
ソフト面では、従業員のトレーニングです。毎年、介護介助サポートセミナーの講習を受け、お客様が快適に利用できる対応を心がけています。」

北村氏:
「SDGs17ゴールのうち、自然環境保全は40%程で、その他ゴールは多岐に渡ります。すなわち、“地域との共存”、“お客様のケア”、“従業員のケア”、“事業のケア”により、全てのバランスをとることで持続可能な宿泊施設を作っていく
…という概念は、SDGsの取り組みに包含されている内容だと考えます。」
4. ここまでのまとめ
パネルディスカッションでは、宿泊業界がSDGs推進に取り組む上での課題・解決策・メリット・効果、そして今後に繋げていくための大切な視点 …と様々な角度で討論が行われました。以下、特に抑えておきたいポイントを記載します:
日本の宿泊施設に元々備わる「持続可能性」の側面を上手く引き出すことが、 グローバルチェーンとの差別化を図り、海外のマーケットに発信する強みとなる。
SDGs促進を成功に導くカギは、従業員の理解を得ること。成果指標を掲げ、 可視化・数値化し、SDGsを身近に考える環境があれば従業員の意識は変わる。
お客様の理解が得られれば、ラグジュアリーとサステナビリティは共存し得る。 そのために、業界でネットワークを作り、一緒にSDGsを盛り上げて啓蒙することが大切。
全国各地の日本古来の考え方・やり方を温故知新の心で掘り下げれば、 そこに世界へ対抗するためのヒントがある。
“地域との共存”、“お客様のケア”、“従業員のケア”、“事業のケア”により、 全てのバランスをとりながら持続可能な宿泊施設を作っていくこがSDGsのゴール達成を可能にする。
SDGs促進において「何から始めれば良いか分からない」という宿泊業界のご担当者さまは、是非次の項目をご覧ください。
5. 宿泊業界が「サステナビリティ」促進に取組む実践的な方法

宿泊施設が一概に「SDGsの17ゴールを目指そう!」と取り組むのは簡単ではありません。そのような課題に対し、一般社団法人観光品質認証協会が提供する品質認証 「サクラクオリティ An ESG Practice認証」の採用が推進されています。
サステナビリティの取り組みは、世界のマーケットと切り離すことができない課題です。 しかし、「実際に何をすれば良いか分からない」という方が多いはず。
そこでサクラクオリティの認証取得は、まず自社の現状を把握し、何が出来ていて、 これから何をすべきかを明確にする上で大変有用です。
最初の一歩を踏み出すための実践的な指標として、宿泊業界の皆さまに活用いただくことを おすすめします。
6. 最後に:観光業界全体で持続可能性を促進するために
今回は、宿泊業界向けにウェビナーを開催しましたが、当日は広く観光業界から沢山の方にご視聴いただき、いかにSDGs・サステナビリティが注目のテーマであるか、再認する機会となりました。
地方の旅館と街中のホテルという二つの異なる宿泊施設の取り組みで見たように、 宿泊業における持続可能性という「価値」が、多様な形でお客様に届けられていることが 分かりました。
会社の理念や地域の特性、そして従業員や地元との関係性などによって、 それぞれに合ったサステナビリティがあるはずです。
あなたの会社や地域の、持続可能性という「価値」は何ですか?
Tricolageでは、地方自治体や観光事業者の皆様のサステナブルな観光づくりを お手伝いしています。
「持続可能な観光に関する方針・計画を策定したいー」
「サステナビリティを社内に浸透させたいー」
「サステナブルなツアーを作ってこれからの旅行者のニーズに応えたいー」
「・・・何から始めれば良いか分からないー」
サステナブルツーリズムについてお困りのことがあれば、お気軽にこちらまでお問合せください!あなたの会社、あなたの地域に沿った最適なサステナビリティを、共に考えていきましょう。
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